ドライアイの原因

紫外線も目に悪い

サンサンと輝く太陽、小麦色に日焼けした肌。夏は若者たちの天国ですが、この日焼けが、皮膚癌の原因としても注目されるようになってきました。紫外線が皮膚にあたりすぎると、長い間に皮膚をおかしくするのです。

皮膚と同じように、目にも紫外線がたくさんあたります。欧米人では、目のなかに色素がないためまぶしく感じる人が多く、よくサングラスをかけています。日本人でサングラスをかけて外出する人は少ないようですから、目にあたる紫外線は相当な量になるはずです。しかも、洋服で皮膚が保護されている間でも、目は保護されていないのですから大変です。

なぜ紫外線がからだに悪いのでしょう? 紫外線が遺伝子に直接害を与えるという考えもあります。最近は、紫外線が細胞にあたると活性酸素が発生して障害を起こすことがわかってきました。活性酸素とはなにか、みなさんご存じですか? できるだけ簡単に説明してみましょう。

三〇億年ほど前に生物が発生したときは、もともと地球上には酸素がありませんでした。それが植物の発生とともに、酸素の濃度が高くなってきました。このとき、ほとんどの生物にとって酸素は毒だったのです。いまでも嫌気性菌といって、酸素があると生きていられない生物があるくらいです。一方、酸素の利点はエネルギー効率がよいことです。酸素を使えば自由に動き回れるだけのエネルギーが得られます。しかし、酸素は容易に活性酸素に変わって細胞毒性をもちます。酸索を使わなければ、毒を体内に入れることもないかわりに、ひっそり生きていかなければなりません。ここで生命は一大決心をします。酸素を使って元気に生きよう、活性酸素のリスクをとろうと。こうして生命は酸素とのおつきあいを始めたのです。ちょ
うど、原子力は危険だけど効率がよいので恐る恐る使い始めたのと似ています。


慢性的な大気汚染が目に悪影響を及ぼす

さて、乾燥ばかりでなく、大気汚染も目に直接影響します。最近はあまり聞かれなくなりましたが、光化学スモッグは目と呼吸器をまず侵します。目がちかちかする、涙が出る、目が痛い、目が赤くなる……これらが光化学スモッグの症状ですが、まるでドライアイと同じです。呼吸器の症状としては、呼吸ができない、咳が出る、息が苦しい、喘息になる、胸が痛いなどがあります。汚れた大気に直接接する目と、大気を吸い込む呼吸器が障害を受けやすいことは明らかでしょう。

目の場合をくわしく考えてみましょう。同じ大気汚染でも、すべての人が目が痛くなるわけではありません。たとえば、ある地域に「今日は気温が上がって風もないため、光化学スモッグが発生するでしょう」などと、警報や注意報が出たとします。するとその地域にいる何人かの人が目の痛みを訴えます。それは誰かというと、涙の機能の悪い人、潜在的なドライアイの患者さんが要注意なのです。


目を酷使する作業はたくさんある

コンピュータやワープロがまばたきを減らし、涙を乾かすといいましたが、ほかの仕事はまばたきを減らすのでしょうか?

実はどんなものでも「凝視」といってじっと見つめると、まばたきは減るのです。読書、映画鑑賞、編み物、洋裁など、すべてまばたきを減らします。そのなかでも、とくに目に負担のかかる仕事があります。ただまばたきが減るばかりでなく、ほかの要素も加わって、さらに目を酷使するものです。ここでは、いくつかのそんな仕事を見てみましょう。


パソコンやワープロは涙の天敵

乾燥したオフィスで、さらにドライアイを引き起こしているのがコンピュータ作業です。ほかの仕事ならなんとかできるのに、コンピュータやワープロだけは目が疲れてしようがないという人は多いものです。どうしてコンピュータ作業は目に悪いのでしようか。鍵は、まばたきの数と視線にあります。

コンピュータ作業はまはたきを減らす

まず、まばたきの減少。これはコンピュータ作業において顕著です。前にもお話ししましたように、私たちは普通、一分間に約二〇回程度まばたきをして目の表面に涙の海をつくっています。

ところがこのまばたき、コンピュータ作業をしていると、一分間に五回程度に減ってしまうのです。本来ならば三秒にI回まばたきをしていたところが、12秒に一回になってしまうのですから、目の表面が乾かないわけがありません。

読書や書類書きでもまばたきは減少しますが、入力するたびに確認作業が必要なワープロやコンピュータは、凝視の程度が高くまばたきの減少も著しいのです。なにかを見るとき、それが見やすければ凝視の程皮が軽く、見にくければなんとか見ようとして凝視の程度が高まります。そのため、コンピュータの字が小さかったり、画面が暗かったり、画面の画素数が少なかったりすると、さらにまばたきが減少してしまいます。部屋の螢光灯や外からの光が画面に乱反射している場合も要注意です。

最近はどこのオフィスでも、コンピュータやワープロが使われていますから、ちょっとまわりを見回してみていただければ、いかにみなさんのまばたきが減っているかがわかるでしょう。


ストレスが涙を減らす

仕事中や試験の前などでストレスを感じたときに、目が疲れたり、目が気になることがありませんか。

現代社会はストレス過剰の時代でもあります。ストレスと涙の関係についての研究はまだ少ないのですが、忠者さんと話をしていますと、ドライアイはストレスで悪化する場合が多いことが、はっきりとわかります。

原因はなんでしょう? はっきりしませんが、緊張そのものが涙の分泌を減らすことがあるのです。これは、人間のからだを調節している交感神経と副交感神経の二種類の神経系を考えてみるとわかります。

このシステムは、我々の意識とは別に自動的に働きます。幟ったり、仕事で緊張したりすると、交感神経が優位になって心拍数も増しアドレナリンが分泌されます。一方リラックスすると、副交感神経が優位になって心拍数も減少します。涙の分泌はどちらかというと副交感神経によってコントロールされていると考えられていますので、リラックスしたほうが涙は出やすく、緊張すると出にくくなるのです。


夜が長いと目が乾く

起きている時間が増えている

1991年の日本人の平均睡眠時間は7時間35分で、毎年少しずつ減少しています。起きている時間が寝ている時間に比べて増えているわけです。起きている間は必ず目を開けているわけですから、ドライアイにとっては大敵です。

実際、患者さんのなかには、睡眠時間が短いときに症状が悪化するという人がいます。Sさんもその一人で、睡眠時間が六時間以下になると、突然ドライアイの症状があらわれるそうです。

しかも、ただ起きているだけでなく、視覚情報化社会の現代では、遊びも仕事も目を使わなければできません。仕事で一日中コンビュー・夕を見ていた人が家でもビデオを見ているなんて、考えただけで目にとっていかに負担が増えているか想像がつくでしょう。

テレビの深夜番組も充実して、いくらでも起きていることができます。東京、大阪、札幌などの大都会では、深夜すぎまでネオンがともっていて休む暇もありません。起きている時間が増えれば増えるほど目は開けっ放しになり、それだけドライアイになりやすいのです。

さらに追い打ちをかけるのが、仕事の後のおつきあいです。お酒を飲みに行ったり、ディスコに踊りに行ったりすれば、そこはもうタバコの煙で充満し、ほこりもたくさん舞っています。こんなところが、目にいいわけがありません。お酒を飲みに行くと必ず目が充血するという人がいますが、これは決して酔いのせいばかりではありません。夜遅くまで起きているためでもあるのです。夜の社交は、目には大敵なのです。


乾燥したオフィスは要注意

あなたのオフィスはどれくらい乾燥しているかご存知ですか。みなさん、温度にはとても敏感で、常に調節に気をつけているようです。暑ければクーフーをかけますし、寒くなれば暖房を入れます。でも、湿度にはあまり注意を払っていないのでぱないでしょうか。しかし、この温度、あなたの健康にとってとても大事なものなのです。

私の患者さんのBさんは二五歳のOLですが、仕事に行くとどうしても目の調子が悪くなるそうです。家にいるときは大丈夫なのに、オフィスではダメ。はじめは仕事のせいかなとも思っていたそうですが、同じような仕事をたまたま出張先でやったところなんともなかったといいます。なぜオフィスだと目の調子が悪くなるのか、まったく理由がわからなかったのですが、よく話を聞いてみたところ、彼女のデスクは空調の吹き出し口のすぐそばで、極端に乾燥しやすいところだったのです。

 


目が乾く原因とは?

ドライアイを引き起こす環境要因について考えてみます。そこで、まず最初に、目が乾く原因の基本的なところを、もう一度おさえておきましょう。

涙が減れば目が乾く

目が乾くメカニズムにはさまざまなものがあるのですが、その最も基本にあるのは、もちろん涙の量が減ることです。これは、前章でお話しした「涙の経済学」に照らしていえば、涙が貧乏になった状態をさします。ですから、涙が十分にある人なら問題にならない程度のことでも、涙が少ないとちょっと目を使っただけですぐに目が乾いて、いろいろな弊害を生んでしまうのです。

ところで、涙には2種類あるとお話ししましたが、最近増えているドライアイ患者のほとんどは、基礎分泌だけが少なかったり出なかったりする人です。したがって、こういう人は、泣くこともできますし、あくびをすれば涙が出ます。

一方、基礎分泌に加えて反射性分泌の涙も出なくなっている人も、数は少ないですがいます。当然、症状としてはこちらのほうが重症です。これは、前章で触れた「シェーグレン症候群」の場合もあり、また別の原因で涙をつくる涙腺が壊されている場合も考えられます。そうなっては、どんなに泣きたくても涙が出なくなってしまうのです。

そして、涙の量がまったくゼロになってしまうと、本来は涙の味方であるはずのまばたきが、目を傷つけてしまうこともあるのです。まばたきは、涙という潤滑油があってこそスムースに働くわけで、潤滑油がないところでまばたきをすれば、目を開いたり閉じたりするたびに目をこすってしまい、目の表面を傷めてしまうのです。

さて、反射性分泌の涙まで出なくなってしまう場合はいろいろと原因が考えられるのですが、ドライアイの大部分をしめる基礎分泌だけ減少するタイアについては、その原因が実はまだよくわかっていないのです。ここら辺がわからないと、きちっとした治療法も開発できないので、早く原因を究明する必要があるのですが、残念ながら、いまのところはっきりしていません。

ただ、ドライアイが先進国に多いことからも、現在のライフスタイルとなんらかの関係があるのでぱないかと考えられています。涙の検査のところで述べた「シルマーテスト」の正常値のボーダーラインが、開発された当初は一五ミリメートルだったのに、1930年代には10ミリメートルになり、現在は五ミリメートルとなっていることからも、人類全体の涙の量が減少傾向にあるといえるのかもしれません。

ドライアイを引き起こすと思われる環境要因については、次項以降でいろいろ見ていきます。

 


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